テンポとは何か?

久しぶりの更新です。

今回は以前から書いてみたかった僕の大好きな概念、テンポ(tempo)についての投稿です。

 

目次

1.目的

2.テンポとは

3.ゲームへの導入

4.テンポSI

5.あとがき 

 

 

1. 目的

 

 これまで多くの方が記事にしてきたであろうテンポ、テンポアドバンテージという概念について、なぜ私が書こうと思ったのか。

 

 それはその複雑さ、奥深さをそのままに表現できないかと思ったからです。

 

 多くの記事は分かりやすく、読んだ皆さんの後のプレイの指針になるように練りに練って書かれています。それ故に、可視化できる数値、盤面の状況等によって表現される場合が多いかと思います。

 

 ここから先の私が書く内容は「明日のあなたのプレイを変えること」を目的とはしません。

 

 ここから先語るのは例えるなら、歴史のお話です。

 かつて幕府があった地を知っていても日常生活に大して影響はないですが、旅行でその地を訪れるなど自分の経験と合わさった時にその体験をより良いものにするでしょう。そんな知識のお話です。

 

 ただ、なんの目的もなくだらだらと語るのでは退屈な授業と一緒。

 筆も進みませんし、読んでいても楽しくありません。

 そこでこの記事の目的を、

全てを読み終えた後に、テンポSIというプレイのどこがテンポプレイなのか?」

 を、読んだ方が自身で考えて理解できること、とします。

 ※テンポSIがどのようなプレイ何かは後述します。

 

2.テンポ(Tempo)とは

 

 早速ですが、そもそもテンポとは何なのでしょうか。

 Tempoは英語ではありません。イタリア語です。

 語源はラテン語のtempusであると言われています。

 tempusはそのまま「時」という意味だそうです。

 そこから派生し、tempoとは「ある時間の区切り」という意味になるそうです。

  

 

 

 時間は直接目で見ることができません。

 

 古の人々はそれを、太陽が朝に昇り、夕方になると沈んでいく周期を地面に立てた棒の影の角度を用いて可視化しました。

 数々の試みから得た経験が洗練された結果、今私たちは1日24時間、1時間60分、1分60秒といった定量化された「時間の区切り」の中を生きています。

 

 時間というのは見えないが故に複雑で理解しがたく、度々、アインシュタイン相対性理論など凡人には理解できない理論さえ生まれます。しかし相対性理論は航空機の時間補正に用いられるなど、そのどれもが後の私たち生活に活きているのです。

 

 同じように、ゲームにおけるテンポという概念も複雑で可視化することができません。ですが、理解することでいつか皆さんのお役に立つ日が訪れるでしょう。

 

3.ゲームへの導入

 ここからが今回の記事の本題です。

 ゲーム、特にターン性ゲームにおけるテンポという概念。

 それは非常に分かりにくいものです。

 

 しかしながら、簡単に済ませてしまうこともできます。

 初めにその例をお話しましょう。

 

 「ターン」というお互いの行動できる時間が制約されている「時間の区切り」がルールで定められています。「ターン」は全てのプレイヤーに等しく訪れることが多く、それを覆すものはその時点で「テンポ的な有利を得た=テンポアドバンテージを得た」という事もできるでしょう。身近なものだとUNOのスキップカードもこれに当たります。

 

 しかし、DTCGやTCGではそれらを直接的にアドバンテージを得るカードは存在こそするものの脅威にならない程度に調整されています。

 正しく言えば、昔のとあるカードの失敗から、そのように調整されるようになりました。

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 ゲームのデザインが洗練された現代において、ターンそのものの回数を多く得たり、相手のターンそのものを失わせたりすることによって得るものを「テンポアドバンテージ」と呼ぶのは正しくもありますが乱暴で、普通にプレイしているプレイヤーにとってそれは無意味なものでしょう。そして、今この記事を読んでくださっている皆様が知りたかったであろう「テンポ」とも少し違う感覚があることでしょう。

 

 

 さて、ここから先が難しいテンポの概念のお話です。

 ハースストーン等のような現代TCGにおけるテンポアドバンテージ、テンポプレイは「時間の区切り」であるターンを有効に使うことを意味します。

 

 このターンを有効に使うことによるアドバンテージという考え方は古くはチェスが始まりのようです。

 私はチェスは遊び程度でしかプレイしたことがないので曖昧な書き方になりますが、ゲームの性質上、対戦が終わるまで駒を動かせる回数が制限されているため、各駒に強さを点数付けし、自分のターンに強い駒を動かし、逆に相手のターンに如何に弱い駒を動かさせるかという考え方の元でプレイする戦術が存在し、それがTCGにおけるテンポプレイの根源ではないかと思います。

 

 では、TCG・DTCGにおいてターンを有効に使うとはどういうことかについて考えていきます。

 一見複雑に見える状況においても、プレイヤーが行える行動というものは大きく分けると以下の2つのどちらかに分類されます。

 

 ①マナを使用し、カード・能力を使用する。

 ②場に出ているカードで、戦闘・能力の使用を行う。

 

 当たり前に見えるかも知れませんが、ここにテンポの考え方の鍵があります。

 

 ハースストーンにおいて、マナクリスタルは1ターン目は1マナ、2ターン目は2マナと徐々に増えていきます。これは多くのDTCGでも同じでしょう。

 

 カードをプレイするためにはマナを使用する必要があり、多くの場合よりコストの大きいカードの方が強いため、お互いが各ターンにマナを使い切れば一見1ターンの価値は同じ、テンポは同等であるように見えます。

 仮にそうであれば、後手のプレイヤーはコインを得るため、ゲームが始まった時点で

有利であるとすら言えるかもしれません。

 

 しかし実際には先ほどの②が効いてきます。

 

 一度コストを支払ってプレイしたミニオンはマナコストを支払うことなく、攻撃を行うことができるため、続くターンをより有効的に迎えることができます。

 

 1T目に魔法のワタリガラス(1マナ2/2バニラ)をプレイした場合、2T目以降はマナを支払うことなく2点ダメージを与えることができるため、2T目の価値は「①2マナを使用したアクション+②2点分の打点」となり、1T目にミニオンを展開できなかった場合と比べてより良いターンを迎えることができます。

 

 コストを投資して行動を行い、それによって得たリソースで続くターンの価値を高める行動、これがテンポプレイの本質です。それがHSではミニオンの展開・そのミニオンによる攻撃に当たります。

 

 そこに①のコストを使用した行動の質が合わさることでどんどん複雑になっていきます。1マナで相手の3マナの行動を対処した場合は2マナ分の投資を無にすることができ、そういった細かな積み重ねでゲームは複雑で奥深くなっていくのです。

 

 応用として、どこに攻撃するのか、何に攻撃するのかといったマナを使わない行動の矛先も、「続くターンに相手のマナを浪費させることができるか?相手の続くターンの攻撃を本来したくない場所にさせることができないか?」といった視点で見ることでテンポアドバンテージに繋げることができます。

 

 よく聞く初心者時代の勘違いとして、「マナを使い切ることがターンを有効に使うことだから、1T目に1マナの火力呪文をプレイヤーに使用してしまう」というものがあるかと思います。これは見かけのテンポに捕らわれていることによって起こる行動ですがこれはテンポプレイとは呼べません。そのターン、マナを使い切ることができた、それだけで終わってしまいます。

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    (勿体ないお化けがでるかも?)

 

4.テンポSI

 ここから先はこの記事の目標でもあった「テンポSI」を代表とするテンポ〇〇についてです。

 一般にコンボを発動させることなく、SI7諜報員をプレイが「テンポSI」プレイと呼ばれます。

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 SI7諜報員というカードはコンボを発動させることにより2点打点をダメージなどの代償なく生むことができ、ただの3マナ3/3としてプレイする行為はカードのバリューを最大限に活かせているとは言えません。

 こういったシナジーカードのシナジーをうまく発動できない場合、そのままプレイするか、それともシナジーが形成できるタイミングを待つべきかというのは頭を悩ませることが多い問題です。

 

 何故シナジーを発動させずにミニオンをプレイすることをテンポ○○と呼ぶか。

 ここまでこの記事を読んでくださった皆さんであれば、ご自身で考えて理解できるのではないでしょうか。皆さんは既にテンポの概念の根底を理解しているのですから。

  

 難しいのはそれを行うべきか否かの判断かと思います。

 その判断を下すためには、そのターンのマナを使い切ること、盤面を取ることだけでなく、そこから先のターンを有効に使うことを意識する必要があります。

 

 ローグの名手、Mryagut選手が実際にテンポSIを行った局面をお見せします。何故ここでテンポSIなのか、SIを出すことで相手のどのようなアクションを続くターンの行動で対処できるかに注目してご覧いただければと思います。

(本当は自分のSSにしようと思ってローグ使ってみましたが30戦してテンポSIの場面0でした・・・)

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5.あとがき

 ここまでご覧いただいた皆様に感謝申し上げます。

 私自身初めてTCGに触れたのは18年前、ちゃんとしたルールの元、大会などに参加してから16年が経ち人生の大半をカードゲームと共に過ごしてきました。

 これまでのTCG人生で最も好きで、最も難しく、そして最も美しいと感じていたのがテンポアドバンテージという概念でした。

 少しでもその本質や素晴らしさを伝えられればと思い、記事にすることを決意致しましたが、所詮は素人の思い付き。読みにくい部分などあったかと思いますが伝えたかったことは全て盛り込めたかと思っております。

 

 私個人の今後の活動ですが、1月はAsia3位、2月はNA27位で終えることができ、現在HCTポイントも27pt獲得しております。5月に予定されているハースストーンアジア太平洋地区予選への出場権もほぼ手中にはありますが油断することなく3月も高ランクで終え、今年も開催が予定されているハースストーングローバルゲームズの日本代表候補者枠を目指して頑張っていきます。

 twichでも配信を行っておりますので、そちらも是非、宜しくお願い致します。

www.twitch.tv

 

 改めまして、最後までご覧頂きありがとうございました。